研究会活動報告
| 2008.05.17. | 第一回研究会 ・「立川反戦ビラ事件」最高裁判決を批判する 住居侵入罪の目的外使用=言論弾圧と萎縮効果を許すな |
「立川反戦ビラ事件」最高裁判決を批判する
住居侵入罪の目的外使用=言論弾圧と萎縮効果を許すな
「憲法・平和研究会」第 1 回研究会「立川反戦ビラ事件最高裁判決を批判する」(専修大学社会科学研究所定例研究会と共催)が 5 月 17 日(土)15:30 - 18:00、専修大学神田校舎7号館大学院教室で開かれた。報告者は、内田雅敏弁護士(立川反戦ビラ裁判弁護人)で、コメントは大西章寛氏(立川反戦ビラ裁判元被告人)、司会・コメントは古川純(「憲法・平和研究会」企画委員)である。
■ 異例の長期間勾留
反戦ビラ入れ事件は、2004 年 1 月、立川自衛隊宿舎での自衛隊イラク派兵反対ビラ・ポスティングに対して刑法 130 条(住居侵入罪、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物......に侵入し......た者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」)違反で逮捕・起訴した言論弾圧事件である。その特徴は、普通の住居侵入罪による市民の逮捕後の勾留が75日間という異例の長期間にわたったことや警視庁公安部(公安二課)が逮捕後の取り調べを担当したことに示されるように、反戦言論内容そのものをターゲットにした公安事件であることである。 第1審東京地裁八王子支部判決(2004.12.16)は、市民の表現の自由の優越的地位を認めて可罰的違法性なしとする無罪判決であった。しかし控訴審・東京高裁判決(2005.12.9)は、イラク派兵反対のビラを「自衛隊工作」の内容と判断して公安警察追随型の逆転・有罪判決(3被告人とも罰金刑)を下した。最高裁第二小法廷判決(2008.4.11)は控訴審判決をほぼ追認し、後述の大西氏のコメントが批判するように高裁有罪判決を支持した。 内田弁護士の報告は、NEWS LETTER4 号「銃後の憂に配慮した立川反戦ビラ最高裁判決」を参照していただくことで省略する。
■ 自衛隊情報保全隊が弾圧に関与
大西氏のコメントは、家宅捜索・逮捕から、取調べ(1 回 2 ~ 3 時間を 52 回、1 日 6 ~ 8 時間、22日間継続など)、75 日間の留置場での生活などに及び、特に「しんぶん赤旗」(2007.10.12)が暴露した反戦ビラ弾圧に陸上自衛隊情報保全隊が関与したことを証明する内部文書について資料に即して驚くべき実態が紹介された。また新聞各紙の社説・論説が最高裁判決の及ぼす市民への「萎縮効果」を警告したことなどもとりあげられた。 最高裁判決の問題点として大西氏が指摘された要点は、法益侵害・被害の程度を判断した根拠は「被害届」だけという形式的なものであること、表現の手段=内容中立規制に見せかけて特定の表現行為を規制したものといえること、つけたりで居住者の「私生活の平穏」を加えて法益侵害とするが住民である自衛官の意思とは全く無関係の認定であること、などである。
■ 特高・思想検察の再来
以上を踏まえた討論では、第1審で在廷証人として採用され自衛官募集のビラ入れ行為について証言された山内敏弘氏(龍谷大学教授)が発言されたほか、参加会員から杉並で起こった公園トイレ壁への反戦スプレー落書き事件について、現行犯逮捕後44日間もの長期間勾留がされ普通の器物損壊よりも重い建造物等損壊で起訴・有罪判決が確定した異例な事例との比較の発言があった。 こうした公安警察による刑法の目的外運用は、2003 年から 4 年にかけてワールドピース・ナウなどのイラク反戦運動の盛り上がりを抑圧する方針から出ているだろう。公安警察・公安検察の手法は、言論内容処罰法を持っていた戦前日本の特高警察・思想検察と変わらないことになるのではないか。「このぐらいは」「この程度ならば」という言論・表現の自由のへの侵害の容認・無関心は、肝心の自由の喪失を確実にもたらすことになるであろう。
(古川 純)


